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仮装通貨で得た所得に対する課税と税務調査

はじめに

 最近、仮想通貨(暗号資産)についての税務調査や申告漏れのニュースをよく目にするようになりました。大きく報道されたもののなかには、ビットコインなどの仮装通貨取引によって得た利益を申告から除外し、所得税を意図的に免れたとして起訴された脱税事件までありました(なお、執行猶予付き判決で終わっています)。

 仮装通貨がインターネットで気軽に取引でき、匿名性が高いこと(実際には、金融庁登録の国内取引所は本人確認を徹底しており、マネーロンダリング対策の観点からも、匿名性は失われていることも多いです)や投資商品としての新しさ、急激な値動きから、故意に、あるいは勘違いや納税資金不足から、無申告や申告漏れが生じることが多く起こっているものと思われます。

 国税庁は、平成30年ころから仮装通貨の税務上の取扱いについて検討した内容を公表し、申告時の所得金額の計算書を公開し、これらをアップデートしてきており、最新のものは「暗号資産に関する税務上の取扱いについてFAQ」(リンク)などとしてまとめられています(呼称も、仮装通貨から資金決済法2条に規定する「暗号資産」に変わっています)。

 本稿では、所得税法・法人税法上の取扱いを簡単にまとめたうえで、よくあるミスについて考察してみたいと思います。

 

暗号資産とは

 資金決済法2条5項では、「暗号資産」とは、概ね、①不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、不特定の者を相手に購入や売却できる財産的価値で、②電子的に記録され、移転でき、③法定通貨や法定通貨建資産ではないもの、と規定されています。代表的には、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、リップル(XRP)など多数存在することはご承知のとおりです。

 

所得税・法人税の取扱い

 暗号資産を売却して、円に換金した場合、所得金額は、

 売却価額(譲渡価額)-取得価額(譲渡原価)

となります。売却時の手数料、取引のためのインターネット回線の利用料やパソコン購入費用など必要経費があれば、必要経費も差し引くことができます(ただし、暗号資産の売却のために必要なものに限ります)。円への換金ではなく、商品を購入した場合も上記の式と同様です。

 しばしば問題となってくるのは、暗号資産を頻繁に売ったり買ったりしてきたなかで、譲渡対象となった暗号資産の原価をどのように計算するか、具体的には、総平均法と移動平均法という二つの計算方法のうちいずれを使うべきかという問題です。国税庁が指針を出すまでは、税務調査で高いほうで計算されて課税される事例もありましたが、今は、総平均法と移動平均法という二つの計算方法のうち、当事者が選択した方法(選択届出しない場合、個人においては総平均法、法人においては移動平均法)により計算した金額となるとされており、国税庁HPでも計算書も公表されています。多くの場合、取引所から年間取引報告書が交付されますので、その報告書で取得価額や売却価額を確認し、国税庁HPの計算書を使って計算すればよいでしょう。

 また、有名な話ですが、暗号資産の取引から生じた所得は、原則として雑所得となります。雑所得の場合、総合課税となるため、場合によっては最高税率が課され、せっかくリスクをとって稼得したのに、大半を税金で持っていかれるような事態が生じます。なおかつ、雑所得ですので、損失が出たとしても、ほかの所得と通算することはできません。

 もちろん、仮に暗号資産取引自体で生計を立てているなど事業性があれば、事業所得とすることができる場合もあります。ただ、その場合であっても、税務署から雑所得課税を言われる場合に備えて、事業性を説明することができるようにしておく必要があります。

 他方、法人については、暗号資産に係る譲渡損益を、譲渡の生じた事業年度において益金又は損金の額として計上することになります。のみならず、暗号資産を事業年度末に保有している場合には、帳簿価額をその事業年度末の時価で評価し、評価損益をその事業年度の益金、損金に算入しなければなりません。そして、翌事業年度は事業年度末の時価で洗い替えた価額を帳簿価額とします。この作業は忘れないようにしなければなりません。

 

落とし穴

 投資家が、頻繁に取引をしていると、保有する暗号資産Aで別の暗号資産Bを買うということがよく行われます。その場合、暗号資産Aにおける含み益が実現するということに注意しないといけません。つまり、この取引では、暗号資産Aを譲渡したとされ、暗号資産Aに含み益があれば所得が発生するのです。

 例えば、購入時100万円、時価120万円の1ビットコインで40リップルを購入する場合、投資家としては、100万円が40リップルになっていると理解しますが、税務上は、一旦100万円の1ビットコインが120万円で譲渡され、20万円の含み益が実現したので申告が必要となり、40リップルの取得価額は1リップルあたり3万円と考えるのです。

 したがって、仮にその後リップルが1万円に暴落した場合であっても、ビットコインに関する含み益に関する申告は免れることができないのです。リップルで含み損を抱えていると思っている投資家は、儲かっていないから申告しないでいると、思いがけない課税を受けることになる点は要注意です。

 

まとめ

 国税庁の近年の調査実績などによると、暗号資産に対して重点的に税務調査や課税が行われていることが窺えます。それは裏を返すと納税者のミスが多発していて、かつ税金を取りやすい分野だからです。

 納税者としては、冒頭にあげた国税庁のFAQに照らしてもう一度自らの申告内容をチェックしたり、専門家の力を借りて申告内容などに問題がないか確認したりするによって、税務リスクを減らすとともに、万が一、税務調査を受けた場合には、専門家にいち早く相談して対応するべきでしょう。  

(執筆:永井秀人)

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