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テレワークと税務

テレワークの現状

 2020年からの新型コロナウイルス感染症の拡大により、テレワーク(リモートワーク)が急速に普及しました。企業でお勤めの方で、自宅等からZoom、Microsoft Teams、Google Meets等のウェブ会議ツールを使って会議に出席した経験がある方も非常に多いのではないかと想定されます。

 テレワークとは、厚生労働省のポータルサイトでは、「ICT(情報通信技術)を活用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」などと定義されています。従来、一般的に行われてきた企業が準備したオフィスで勤務する形態ではなく、ICT、具体的にはオンラインアクセスを通じて、自宅を含め、様々な場所からの勤務を可能にする点に特徴があります。厚生労働省は、働き方改革の一環として、こうしたテレワークを積極的に推進しており、「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」や「テレワークモデル就業規則~作成の手引き~」といった実務指針等も公表されています。

 この記事では、もはや日常になりつつあるテレワークが企業の税務に与える影響について触れたいと思います。

 

国内テレワークと税務

 国内のテレワークについては、勤務場所がオフィスではないということ以外は通常の勤務とは変わりませんので、税務上の処理は基本的にこれまでの取扱いと変わるところはありません。すなわち、テレワークによる労務対価は、企業の役員・従業員ともに、原則として給与所得として課税され、支払い時に源泉徴収の対象になります。このケースにおいて、通常のオフィスによる勤務分とテレワークによる勤務分は特に区別されることなく、処理されることになります。

 また、通勤手当については、所得税法9条1項5号及び同法施行令20条の2により一定の限度額まで非課税となっており、現時点で、こうした法令の定めの改正等はなく、国税庁からの特段の公式見解も示されていません。しかしながら、こうした非課税取扱いは、「通勤のため交通機関(中略)を負担することを常例とする者」(所得税法施行令20条の2第1号)であることが前提となっておりますので、テレワークを基本として原則として出社不要とした場合にまで、これらの適用があるのかについては疑義が残りますので、注意が必要です。また、企業の立場からみても、通勤の必要がないにもかかわらず、コストとして通勤定期券等の購入を前提とした従前の通勤手当の支給を続けるのかについては、検討が必要と思われます。

 一方、テレワークに特有の事項として、テレワークにより発生する諸費用を企業側が負担する場合の税務上の取扱い、具体的にはこれらが役員・従業員に対する給与として課税されるか(源泉徴収の基礎となるか)が問題となります。この点に関しては、国税庁が「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」を公表しており、こちらにおいて、在宅勤務の費用の実費精算については、給与所得課税の対象とはならないといった一定の整理が示されています。

 

国境を跨ぐテレワークと税務

 テレワークは、国内よりもむしろ国境を跨ぐ場合により慎重な検討が必要になります。日本も含め、国際税務の世界では、従前、労務対価についてはそれぞれの国が自国での勤務分につき、課税対象(国内源泉所得)として税金を課するのが一般的ルールでしたので、例えば、アメリカに在住の従業員が日本企業の日本本店の仕事をアメリカからテレワークで行うような場合に、日本での課税関係がどうなるのか(日本企業からの支払いにつき源泉徴収が必要になるか)ということが問題になります。

 この点については、国毎にルールが異なる可能性があることから、海外での取扱い等については現地の専門家に確認が必要ですが、日本においては、勤務する人が物理的に勤務する場所がどこかによって、上記課税対象(国内源泉所得)かどうかを決する当面の運用となっています(詳細については、「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」の問11~11-4を参照ください。)。よって、上記の事例では、従業員が物理的にアメリカで勤務している以上、日本では原則として課税されないことになります。

 なお、上記検討においては、以下の点に注意が必要です。

  • 日本の税法では、日本企業の役員については、海外の勤務分についても、課税対象(国内源泉所得)として取り扱うものとされています。こうした役員の課税関係については、租税条約における役員条項(例えば日米租税条約第15条)が適用されることによりそのまま維持されるケースが多いと思われますが、個別のケースに応じて、適用される租税条約の確認が必要です。
  • 海外からリモートワークする役員・従業員の職務如何や所在地国での税法の定めによっては、当該役員等の所在地国において勤務先である日本企業の恒久的施設(Permanent Establishment)が存在するとして、日本企業に当該所在地国での税務申告や納税が要求されるケースがあります。

執筆:下尾 裕

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